FUJIFILM WORKFLOW XMFで印刷会社の働き方が変わる ~三浦印刷(東京都)~

1931年(昭和6年)に創業された三浦印刷は、東京都墨田区両国に本社を構える総合印刷会社である。生産管理や営業部、製版部門を抱える両国本社、刷版、印刷、加工部門を有する船橋工場(千葉県)の2拠点で、企業活動を行っている。CTP、Jet Press 720、オフセット印刷機などを導入し、さまざまな印刷関連サービスを展開する同社がセンターRIPとして採用しているのが富士フイルムの「XMF Complete」、「XMF Remote」である。そして2018年、三浦印刷は印刷ワークフローの大きな転換をするべく、XMF Remoteをフル活用したオンライン入稿・校正システムの稼働をスタートさせる。三浦印刷がXMF CompleteとXMF Remoteで何をしようとしているのか、キーパーソンとなっている同社品質保証部の方々にお話を伺った。

※この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2018』からの転載です。

出力トラブル解消と生産性向上に寄与したXMF Complete

三浦印刷が「FUJIFILM WORKFLOW XMF」を導入したのは、2007年のこと。まだ世の中でもAPPE採用のワークフローRIPは発売されたばかりだったが、これからはPDFワークフローがDTPの中心になると予想し、導入を決定した。

「CTPシステム全体のリニューアルを考える中で、さまざまなメーカーのワークフローRIP、CTP、色校正システムを検討しましたが、私たちが目指そうとした製版環境にいちばん近かったのがXMFでした。さらに、当時主流だった現像タイプのDDCPより、インクジェットプルーフにも伸びしろを感じて、『よし、XMFと合わせてPRIMOJETも導入してみよう』と決めたのです」(三浦印刷 品質保証部部長・戸田健太郎氏)

戸田氏は、その決断の理由を語ったが、少し当時を振り返ってみると、APPEやPDF入稿、インクジェットプルーフなどが、時代の最先端だったため、業界全体を見ても導入数が少なかった。しかし技術の進歩にも期待して導入した当時の最新システムは、今や製版・印刷業界でも必須の設備となっている。
 
三浦印刷が導入した「XMF Complete」は、FUJIFILM WORKFLOW XMFのほとんどの機能が利用できる構成になっている。基本機能としては、ジョブのキュー管理や面付け(自動面付け、大貼りを含む)、出力設定を自動化するジョブテンプレートの作成、そして出力関連機能としてPDFの作成や、In-RIP Trappingを含むAPPEによるRIP処理など、製版に掛かるほとんどの作業を担うワークフローRIPだ。このXMF Completeを導入して、まずDTPエラーが削減され、PDFワークフローによって安定した出力環境を得ることができたそうだ。もちろん、生産性も向上し、製版部門の作業効率は格段に上がった。そして、2016年に導入したのが「XMF Remote」である。

左:三浦印刷株式会社 品質保証部部長 戸田健太郎氏
右:三浦印刷株式会社 品質保証部 松原 佑氏

XMF Remote導入のきっかけ

XMF Remoteは、インターネットを活用し、クライアントや協力会社との間で「データ入稿・校正・検版・承認」が自由に行えるWebポータルシステムである。たとえば、営業マンが出先で進行中のジョブをモバイルツールを使って確認し、クライアントからの問い合わせに対応したり、承認をし、下版を行うことができる。クライアント、営業、製版、印刷と関係者が大人数になりがちな印刷工程間で、インターネットを介してコミュニケーションをスムーズにすることができるシステムになっている。

品質保証部では、XMF Remoteの導入について内々での検証を続けていた。導入するメリットとしてまずイメージできたのは、製版工程のワークフローの簡素化、スピードアップ。というのも、PDF入稿が年々増加してきており、このPDFファイルのプリフライトや検版にかなりの時間と手間を掛けていることが分かってきたからだ。

しかし、本格的な導入を行うには、製版や印刷部門だけではなく、クライアントや営業部門、そして生産管理など工程の上流に関わる部分からも協力が得られなければ意味がないとも考え、導入に躊躇する声もあったという。しかしある日、営業部のスタッフがXMF Remoteの実演を見聞し、「ウチでもXMF Remoteを導入して、オンライン校正をやってみたい、これで営業部門のさまざまなムダが削減できるのではないか」と提案に来た。これを聞いた戸田氏と同部の松原 佑氏の2人は、「時期が来たのではないか」と感じたという。 

「それまで私たちは、XMF Remoteで改善できる時間やコストのムダ削減、結果的に生まれる生産性向上といった部分を目に見える形で提案書に記入できなかったので、XMF Remoteの導入は難しいかなと思っていた部分もありました。しかし、営業部と話すことで、『XMF Remoteで働き方改革ができるのではないか』と意見が一致したのです。クライアントの間を動き続ける営業部のスタッフが、色校正を取りに来るためだけに一度帰社したり、連絡待ちだけで退社時間が遅れたり、そういう仕事のやり方をXMF Remoteを活用して残業を減らそう、と意見が一致したのです」(戸田氏)

XMF Remoteであれば、PDFをアップロードしてもらった後で確認作業を行い、RIP済みデータをモニタ上で確認できる。印刷して確認する仕事を最小限にできるので、工数削減に繋がるというわけだ。
 
「今後PDF入稿はさらに増えていくことが予想されます。入稿時の確認作業がXMF Remoteで改善できれば、作業効率の向上に繋がる。さらには将来的なリモートの校正システム、デジタル検版が有効に働いてくれるはずです」(松原氏)

XMF Completeを操作する製版部門。面付けやRIP処理、プルーファへの書き出しなどを行う

社内ワークフローの改革に着手

営業部と製版部でXMF Remoteの導入に目処が付いたところで、まずは老朽化も懸念されていた入稿用サーバをXMF Remoteに移行することが決定した。クライアントへの周知時間を含め、約1か月の期間でオンライン入稿の窓口をXMF Remoteにすることに成功。その際には、入稿PDFのルール作りも改めて整理して作成された。

「いちばん力を入れたのがこのPDF書き出しの設定作りでした。つまり、ゆくゆくはXMF Remoteで公開することを想定し、かつXMF Completeで面付けしてRIP処理することができるPDF書き出しのアプリケーション設定を用意することです。これはある程度ジョブに合わせて柔軟に考える必要があるので、これからも運用方法は検討を重ねる必要があると思います」(松原氏)

「さまざまな場所でそれぞれが使いやすいPDFを作るのはもうやめようということですね。中間ファイルを集約して、これまでプルーファの機種ごとに行っていた面付けもXMF Completeだけでやる、工程をさらにシンプルにしようと考えています」(戸田氏)

XMF CompleteやXMF Remoteといったソリューションは、運用がはまれば便利で生産性や効率性の向上につながるが、そのためには下準備も必要となる。とくに三浦印刷のように取引企業が多岐に渡り、印刷内容もペラ物からポスター、カタログ類からPOPといった具合に多品種を扱っていると、ルール作りの過程も前提条件が多くて難しい。それをひとつずつクリアにする作業で、XMF Remoteを導入して2年、ようやく全ジョブ運用、営業部に公開、というところまでに至った。

三浦印刷のFUJIFILM WORKFLOW XMFを軸にしたワークフロー
三浦印刷の土台はJapan Colorによるカラーマネージメント。Japan Colorをベースに色管理された環境で、どのデバイスで出しても同じ色が出るということを保証している。その上で、製版はXMF Completeですべてハンドリングされ、クライアントとのオンライン入稿システムはXMF Remoteを活用している

オンライン校正の現実的な使われ方は?

2018年にはオンライン校正もいよいよ始まる予定だが、まずは営業スタッフによる確認、承認作業がひとつのハードルだ。
 
「オンライン校正は、機能的には今の状態で全然OKだと思っています。たとえば、文字の多い印刷物は充分にオンライン校正向きですね。あるいは、校正を入れる人がたくさんいて、どれが最終か分からなくなってしまうような仕事もオンライン校正で過程が見えるようになればトラブルは少なくなるでしょう。一方、色校を何度も出して色調にこだわって作り上げるような案件は、前半は色校正を主軸に、後半はオンライン校正を活用するなど使い分けが進むのではないでしょうか」(戸田氏)

日常的に多くの仕事をこなしながら着実に次のステップに進むためには、入念な下準備が欠かせない。三浦印刷では、この下準備を品質保証部で担い、ワークフロー改善への取り組みと、どのデバイスで出しても同じ色で出るから色校正には何を選んでも大丈夫、という自社内カラーマネージメントシステムへのこだわりがある。印刷物制作の土台となるワークフロー構築と色管理は常に万全。当初目指した働き方改革が実現される日もそう遠くない時期に現実となるだろう。

左:「DocuColor 1450GA」。RIP済み8bit TIFFをDropPrint(ホットフォルダ)経由で受け取り、カラーマッチング処理をしてプルーフ出力する
右:「PRIMOJET」。面付け済み1bit TIFFファイルをPRIMOJET Serverで処理してプルーフ出力
船橋工場に設置されているJet Press 720。XMF Completeで処理したRIP済みデータを印刷。プルーファや最終成果物を印刷する際に活用されるが、本機校正代わりに使われることも多い。「本機校正は時間もコストも掛かり、色もぶれることがある。対して、Jet Press 720は定期的な管理を行えば色がぶれることがない。これはデジタル印刷ならではの良さ」と戸田氏