【しくみ事典アーカイブ】インキの基礎知識


※この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』からの転載です。

OVERVIEW
制作したデータの「色」を、紙に再現する色材印刷インキである。その種類は印刷面の素材や版式で異なり、平版凸版用の高粘度のペースト状グラビアフレキソ用低粘度の液状に大別できる。ここではオフセット印刷で用いるインキの組成について紹介する。
インキは水や油などに溶けない顔料と、顔料を印刷機上から紙まで運び紙の上に固着させるビヒクルから成り立つ。顔料はインキの色のもとになるものだが、種類によって、発色性や各種の耐候性などが変わるため、求められるインキの色や用途に応じてさまざまな配合が必要となる。

インキの製造工程と組成

インキのセットと乾燥

オフセット印刷機は、3~4枚/秒で印刷紙が次々積み重ねられるが、積まれた紙の裏を汚さぬよう印刷直後、インキ溶剤は紙に急速に浸透してインキ皮膜は一挙に硬く締まる。これで重ねた紙の裏にインキが付着しなくなる。これを「インキがセットした」という。その後、数時間以上かけインキ中のアマニ油が酸化し、完全に乾燥。輪転印刷機は瞬時に加熱乾燥させるので、この段階はない。
また、版式によりインキの乾燥形態も異なり、オフセット印刷では酸素による酸化重合乾燥。コミック誌のような凸版は紙に浸透するのみ。グラビアでは加熱による蒸発乾燥、プラスチックなどへの印刷では紫外線で瞬時に硬化するUVインキを使うなど、印刷対象によっても乾燥形態は異なる。

印刷直後の「セット」

インキの乾燥形態(版式例を記載)

インキの基準色と特色

パッケージなど単色で印刷を行うときには、プロセスインキ以外の基準色を混合した特色を使うことが多い。基準色としてC(藍)系、M(紅)系、Y(黄)系の近似色がおよそ20種類くらいある。これら3系統のうち、色相の近い色同士の混色では鮮やかな色となり、色相の離れた色同士の混色では濁った色となる。

COLUMN
ビヒクルの種類や量
ビヒクルの種類や量も、光沢や乾燥性、こすりに耐える耐摩擦性など、インキの性質を左右する。一般的にビヒクルは、インキに流動性と乾燥性を与えるワニス(合成樹脂、植物油)、印刷後のインキ光沢などの性質に大きな影響を及ぼす石油系溶剤などで構成されている。ワニスは合成樹脂とアマニ油などの植物油(乾性油)を、300℃くらいの高温の中で混合させて作る。
製造工程では、ワニスと顔料を撹拌混合し、さらに顔料の粒子を細かく分散させるため、ロールミルですりつぶす。最後に石油系溶剤や乾燥剤などを混合して、インキができあがる。
COLUMN
特殊な色のインキ
基準色でも作れない特別な色もある。金、銀、パール、蛍光色などは、顔料が違うため基準色では作れない。金は真鍮の粉末を、銀はアルミの粉末を使ったインキで、金には青みから赤みまでさまざまなバリエーションがある。パールは雲母の粉末を酸化チタンで処理したもので、色インキの混色でいろいろなパール色が得られる。蛍光色は赤、黄、緑系などがあり、青系は蛍光の効果が少ない。蛍光色は混色すると鮮やかさがなくなるため、単独で使用する。

関連項目

DIC、PANTONE、TOYO
すべてインキ会社の名前。DIC(DIC・日本)、PANTONE(パントン・米国)、TOYO(東洋インキ・日本)。それぞれの会社で番号を決めた特色を示すカラーガイド、カラーチップが販売されている。各社の特色番号を指定すると、印刷オペレーターが基準色やCMYKの色を混色して、その特色を作る。なお、各社間での色名の統一はない。

マットインキ
印刷面が平滑でないと印刷物はマット(艶消し)状に見える。オフセットインキの墨にはマット墨があるが、それ以外では完全にマット状に刷ることのできるインキはない。添加剤としてマット剤を混合する方法もあるが、完全なマットにしたいのであれば、印刷後にマットニス引き加工を行う。

メジューム
アルミナホワイト(硫酸アルミニウム)など、白色顔料をワニスと練り合わせたインキのこと。透明性が強いので、色インキと混ぜると透明な薄色が得られ、4色のカラー印刷に、さらに薄色を刷り重ねるときなどに用いられる。これと逆に、チタンホワイト(酸化チタン)を主成分とするインキは、不透明性の強い白インキとなる。下色を消したいときは白インキを混ぜる。

色の掛け合わせ
CMYK4色の中から選んだ平網を掛け合わせて刷り重ねると、さまざまな中間色が得られる。いわゆるチント処理のことを「掛け合わせ」という。2次色の掛け合わせでは鮮やかな色が、3次色の掛け合わせでは濁った色が作られる。

耐摩擦性
パッケージや包装紙の印刷面はこすられることが多いが、こすられてインキが落ちてはならない。そのためにインキに耐摩擦性が必要。とくにパッケージ用のインキは耐摩擦性が高くなるように作られている。

プロセスインキの耐光性
CとKは耐光性が強いが、YとMは耐光性がない。通常のインキでは、10日間ほど太陽光にさらされただけで褪色してくる。パッケージなどには超耐光性のYとMを使うと、太陽光下でも褪色しにくくなる。

インキ濃度
CMYKの印刷の濃さは、色濃度計で測定した色濃度で管理している。CMYそれぞれの補色のRGBフィルタを通して反射量を測り、濃度として表示する。通常、CMKは1.6~1.8程度、Yは1.0の濃度となる。Bフィルタの特性が変わっているため、濃度計の種類によってY濃度だけ数値が変わるので注意が必要。

環境に関する基準
近年、印刷業界でも「環境に関する基準」が整い始めている。インキについては「石油系溶剤」がVOC(揮発性有機化合物)に該当することから、インキメーカー各社では、石油系溶剤の含有量を抑えることだけでなく、大豆インキなどの、できるだけ環境にやさしい種類のインキを使って開発が進められている。究極は「NonVOCインキ」だが、乾燥性が今後の課題となっている。


INFORMATION
しくみ事典アーカイブは、書籍『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』から一部の記事を転載して掲載しています。

『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』
定価 4,104円(税込)
ISBN 978-4-86246-366-1
発行・発売 ボーンデジタル
DTP&印刷スーパーしくみ事典は、DTPや印刷業務に携わるすべての人に役立つ図解事典です。 巻頭特集では「最新トピック100」と題して、「付加価値を創出する最新事例」、「Adobe CC最新動向」、「デジタル印刷最新動向」といった幅広い分野を網羅する業界最新トレンドを多数ご紹介します。