デザイン雑話連載

組版の新人さんへ、しがない編集者からのアドバイス

zatuwa_imgちょっと気になったので、長体平体についてのメモ書きです。しながい編集者から新人の組版をされる方に、少し気にかけて欲しいことを書きます。

このページを見る多くの方はご存じだと思いますが、長体は文字を横幅を縮めて文字を縦長にすること、平体は縦幅を縮めて文字を横長にすることです。多くのテキストソフト系には長体・平体の機能がありませんが、Adobeさんのソフトには付いています。

さて、組版において、長体と平体は使わないのが原則です。デザイナーさんもデザインするときに、意図的な演出がない限り、まず使うことはありません。その最大の理由は、「文字(書体)は、美しさや読みやすさが、ベストの形でデザインされている」から。文字に長体や平体をかけるということは、それを崩すことになるので、長体や平体は使わないのが基本になります。

では、文字があふれてしまうときはどうするのか。その対応の優先順位は以下になると思います。

(1)文字間をツメる
(2)原稿を変える
(3)長体または平体をかける

(1)は言わずと知れた通りですね。デザイナーさんやベテランの組版さんは、まずこれをやると思います。
(2)は編集者や著者に相談する必要がありますが、これも良くあることです。
(3)は(1)と(2)の方法が使えないときの手段です。ちなみに担当は、どんなに長体をかけたとしても最大70%まで、それ以上はかけてはならぬと、先輩から教わりました。とはいえ、文字サイズにもよりますから70%は絶対値ではありません。見た目の感覚が優先されます。

しかし、本当に大事なことは(1)でも(2)でも(3)でもないのです。最優先事項は何だか分かりますでしょうか?

それは、「美しさ」です。

美しさと一口に言っても、そこにはいろいろ含まれていますが、美しさを構成する要素の一つに「そろっている」というものがあります。「そろえる」ために、(1)と(2)と(3)の優先順位が変わることは、当然あるわけです。
また、そろえるときの基準となるのは、文字量文字の位置言葉の並び、あるいは別の何かということもありますが、肝心なのは、何を基準にそろえると美しく見えるかということ。その結果、原稿が優先されることもあれば、デザインが優先されることもあります。
そしてぜひ覚えておいて欲しいことは、「そろっている」「美しい」ということは、「読みやすさ」「わかりやすさ」につながっていくという点です。

雑誌デザインのアイデア!」の中で取材したベテランADさんも、新人デザイナーさんに最初に注意して教えることは「徹底的にそろえること」だと言っていました。
「そろえる」ことは手間はかかりますが、ハードルはそれほど高くないと思います。新人の方は「そろえる」ことを頭のスミに置いてみて欲しいと思います。
zatuwa_img