「Impremia IS29」は“印刷物”に感動を加える ~廣済堂(東京都)~

1949年(昭和24年)に創業された廣済堂は、東京都港区芝浦に本社を構え、全国各地に営業拠点を持つ総合印刷会社である。長く印刷業界の中で第一線を走ってきた同社代表取締役社長の浅野 健氏は、「これから私たちは、情報の量産ではなく思いの量産を心掛け手仕事をしなければならない」と語る。その思いを具現化する方法のひとつとして、導入されたのがコモリの29インチ枚葉UVインクジェットデジタルプリンティングシステム「Impremia IS29」だ。廣済堂がImpremia IS29で実現しようとしている夢、印刷会社として目指そうとする次世代の廣済堂の姿について伺った。

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※この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2018』からの転載です。

オフセットも凌駕すると期待したImpremia IS29

「グラフィックアーツのジャンルに注目し、『Impremia IS29』で新たな価値創造を模索したい」と語るのは、今回お話を伺った廣済堂の代表取締役社長・浅野 健氏である。

これまで紙メディアは、言うまでもなく信頼性の高いメディアとして、多くの人々に活用されてきた。浅野氏は、この現状を「その紙メディアが今後どうなるのか、たくさんの人が関心を持ってみているのではないか」と分析している。そして紙メディアならではの良さ、一覧性の高さといったメリットに加え、「ハイクオリティなものはプレミアムメディアとして価値をあげていくとみています」と語る。

株式会社廣済堂 代表取締役社長 浅野 健氏

これは、紙メディアの印刷手段としてオフセット印刷機だけを考えるのではなく、プレミアムなものが作成できればデジタル印刷機でも良い。むしろ、現在のデジタル印刷機をしっかり見てみれば、オフセット印刷機の価値を超える機能、クオリティもあるのではないか、という製造ラインの発想の転換でもあった。

こうして導入を決定したのがImpremia IS29だ。導入にあたって、廣済堂さいたま工場の制作部では、オフセット印刷との比較を行ったという。この仕上がりを見た浅野氏は、「Impremia IS29の機能をフルに活用すれば、オフセット印刷も凌駕するのではないか」という感想をもった。とくにオフセット印刷では表現できない色調の再現、つまり、オリジナリティのある印刷物が作れれば、廣済堂の表現の幅を広げることができるとイメージしたわけだ。

「デジタル印刷機は、1990年代のスタート地点でよくオフセットと色味の品質が比較され、“オフセット印刷機の代替”と言われてきました。結果として、“小ロット印刷ならデジタル印刷機”と言われてきたわけですが、本来はやはり別のものです。デジタルでなければ表現できない新しいビジネスの在り方を創造して初めてデジタルが生きる、そう考えていかないといけないと思います」(浅野氏)

廣済堂に設置されたImpremia IS29

印刷という固定概念をImpremia IS29で変えていきたい

デジタル印刷機で廣済堂の新しい価値を生むような紙メディアを作っていこうと導入されたImpremia IS29だが、当初はやはり「色校正で使おう」という声が上がったそうだ。

しかし、浅野氏がImpremia IS29を見た第一印象は、「再現できる色調がオフセット印刷より広い」ということ。これを活かさず色校正のみで使うことを考えると、Impremia IS29の個性・特長をフル活用できない使い方となり、当初の目的とは違うのではないか、と考えたそうだ。

浅野氏がImpremia IS29で変えようと思っているのは、グラフィックアーツに関わる人たちの意識でもある。オフセット印刷の品質、デジタル印刷の品質、と一般的にイメージされるようなものではなく、“Impremia IS29だからできる色の世界”、これをクリエイターと一緒に盛り上げていくことが重要なのである。

「たとえば、弊社で多く取り扱っている同人誌の世界は革新的で、面白いことはどんどんやってみよう、という気持ちがある作家さんが多いんです。Impremia IS29が良いのは、用紙にはオフセット印刷で使える本紙を前処理することなく、そのまま使えること、両面印刷がワンパスでできること、色域が広く彩度の高い色も印刷できること、UVインクジェット機として速乾性が高く、印字部分が隆起するような特長も持っているという点です。UVインクならではの隆起は欠点ととらえる人も多いかもしれませんが、私は逆に隆起を活かしたデザインで見せたら面白いと思っています。現在、コミック印刷に限らず、出版も商業も印刷という点では保守と革新という両軸が求められますから、その点でもImpremia IS29の価値は高いのではないでしょうか」(廣済堂 さいたま工場制作部部長・中村和久氏)

「コミックの世界で革新といえば、同人誌ではRGB入稿が主流になっているという点が挙げられます。Impremia IS29であれば、RGBをそのまま出力できるのは大きいです。オフセット印刷にしてしまうと、せっかくRGBで入稿されても、CMYKに変換して出力されるので、当然色域は狭まってしまいます。今後はRGBの色域に近い状態で出せることをアピールしていきたいです」(廣済堂 さいたま工場プリプレス部製版課出力チーム・チーフ藤井大祐氏)

左:株式会社廣済堂 さいたま工場 制作部部長 中村和久氏
右:株式会社廣済堂 さいたま工場 プリプレス部 製版課出力チームチーフ 藤井大祐氏

色合わせの基本はK-ColorSimulator

現在、Impremia IS29は、社内にある10台のオフセット印刷機に合わせようとK-ColorSimulatorを使って管理している。他社製CMSソフトと比較したこともあったそうだが、それより低価格で高性能。常に多くの用紙種類を使い分けて印刷している廣済堂にとって、K-ColorSimulatorはなくてはならない存在になっている。

「K-ColorSimulatorは、単なるCMSツールという役割に加えて、プレスとプリプレスの“ハブ”になってくれるような存在ですね。オフセットとImpremia IS29の色を合わせ込むときには欠かせません。その作業もチャートを印刷して測色し、プロファイルを作成するというシンプルなものなので、そこまでスキルが要る作業でもない。高機能なことを単純作業でこなしてくれる。誰がやっても同じ結果になって、紙が変わっても正確に色再現できる。こういうきちんと手応えが感じられるCMSツールって、実は意外と少ないです」(中村氏)

現在、廣済堂の印刷現場は、10台のオフセット印刷機とImpremia IS29と多様なデバイスを管理しているが、基本的な色差としてΔE1.0以内をキープ。革新的で独創的な印刷をしようとしても、やはり基本には忠実に、色の標準化は欠かせない作業である。

この色合わせの段階で、印刷と製版の現場ではかなり風通しが良くなり、コミュニケーションも密になった。製版部門も印刷の色に関心を持ってプロファイル作成を担い、印刷部門もそれに応えて技術協力や知識の共有が行われるようになったという。まさに、中村氏の言う“ハブ”的な役割を果たしているというわけだ。

ものづくりの原点は“感動”が伝えられるものを作ること

「Impremia IS29でトップクリエイターの方と作成した印刷サンプルを見ていると、私たちも本来はクリエイターだったんだ、ということを思い出させてくれます。いつの間にか刷るだけの仕事が多くなってしまいましたが、これからは、もっとクリエイティブな仕事に目を向けなければなりません。そのためには、社内スタッフの意識改革も必要です。だからスタッフには『ホンモノを見ろ』と声を掛けるんです。技術的に可能か不可能かなのではなく、まずは感性を磨いて、ものづくりに反応しないと、紙メディアは作品ではなく情報を載せたものになってしまう。私たちが作ろうとするのは情報の量産ではなく、“思いの量産”なのです。だからこそ、ハイスペックで広色域印刷が可能なImpremia IS29が必要なのです」(浅野氏)

廣済堂がトップクリエイターと作成した印刷サンプル集『色彩発想』
左:オフセット印刷
中:デジタル印刷(Impremia IS29) オフセットとカラーマッチングしたサンプル
右:デジタル印刷(Impremia IS29) Impremia IS29の特長である色域の広さ、彩度の高さを最大限に表現したサンプル

一方で、デジタル印刷はまだ発展途上の段階で、IoTやAIといった現在の流れによってどのように変化していくかは誰も想像できない。しかしだからこそ、「今スタートして、ノウハウを貯めておくことが重要」と浅野氏。

老舗印刷会社としてオフセット印刷のノウハウは充分にある。そしてさらに、デジタル印刷機の最新鋭となるImpremia IS29を導入した廣済堂。なにより印象深いのが「作る側も、受け取る側も感動できる印刷物を作りたい」と願う浅野氏の言葉である。デジタル印刷で、心を動かす印刷物を作る─その試みは、これからさまざまな場所から注目を集めることになるだろう。


提供
株式会社小森コーポレーション
http://www.komori.com/