しくみ事典アーカイブ連載

【しくみ事典アーカイブ】印刷用紙の選び方

※この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』からの転載です。

OVERVIEW
印刷物は判型だけでなく、デザイン造本仕様印刷機などによって、用紙の取り都合が異なるため、一番無駄のない全紙を検討する必要がある。もちろん、用途によって選ぶことも重要だ。紙の種類は風合いや種類だけでなく、目的から費用対効果を考え、最適なものを選択したい。なお、同じ種類、同じ厚さの紙でも、A列本判とB列本判では原紙の大きさも連量も異なるので、原紙の種類とキロ数を併記するのが一般的だ。

印刷用紙の種類

印刷用紙の種類は、大きく非塗工紙、塗工紙、微塗工紙、特殊紙(色上質紙、ファンシーペーパー)、軽量の新聞印刷巻取用紙に分けられる。
「非塗工紙」はいわゆる上質紙や中質紙などで、紙の表面に何も薬剤を塗布していない紙で、文字をはっきり読みやすく印刷できることから文字中心の書籍に使われる。「塗工紙」は、表面に薬剤を塗布して(15g/m2程度以上)塗工層を設けることで、平滑性や印刷再現性などを高めたもので、アート紙、コート紙、アートポスト紙などが該当する。「微塗工紙」は、上質紙や中質紙をベースに両面で12g/m2以下の塗工層を作ったもので、カラー写真の再現性がよく、本文も読みやすいことから書籍などに多く使われている。「特殊紙」は紙の表面に多彩な加工や色を施している高級な紙で、ファンシーペーパーとも呼ばれる。

縦目と横目の選択

紙の目の方向と順目・逆目

短辺に対し、目が水平方向に流れているのが横目(Y)の紙。垂直方向に流れているのが縦目(T)の紙

製本する場合は、仕上がり判型に対して逆目になると、折り加工しにくい、開きが悪い、小口が波打つなどのトラブルが発生する。判型に合わせた印刷用紙の選択が重要

紙の包装ラベルと縦目・横目

販売されている用紙を包んでいる包装紙にはラベルがつけられており、そのラベルの位置によっても、紙の目の方向がわかるようになっている

印刷用紙の取り都合

ページものの印刷物の設計では、仕上げ寸法(判型)・ページ数・部数とともに、印刷用紙の寸法も決めることになる。印刷機の構造上、用紙の全面に印刷することはできないので、紙送りなどに必要な余白を計算しておくことが必要だ。また、通常は多ページを面付けして印刷するので、仕上げ寸法に断ち代をページ数の分だけ加えたサイズよりも大きな紙が必要となる。そのため印刷原紙は、規格仕上げサイズよりひと回り大きく作られている。どの原紙にどのような面付けで印刷するかが紙の「取り都合」で、取り方が悪いと不要な印刷料金がかさんでしまう。

輪転印刷で用いる巻取紙のサイズ

輪転印刷機で用いる用紙は巻取紙になっている。巻取紙にはA規格用の「A巻」とB規格用の「B巻」、「B巻」よりひと回り大きい「D巻」がある。A巻はA型輪転機(A全縦機とA全横機)、B巻/D巻はB型輪転(B全判機、B半裁機)を用いて印刷を行う。
各巻取紙の寸法は下の通り。

紙の重さを表す方法

紙は枚数を単位として数えるのが一般的だが、取り引きの際には重さを単位に用いる。坪量(米坪量)は1m2の紙の重さをグラム(g)で表したもので、A、Bなどの用紙サイズとは関係なく比較が可能。また、全判1,000枚のことを1連と呼び、その重量をキログラム(kg)で表したものが連量(キロ連量)である。連量は紙のサイズによって変わるので、必ず全判のサイズを併記する必要がある。

坪量・連量の比較と紙厚の選択

紙の単位重量は、坪量(米坪、メートル坪量、g/m2)が基本となる。連量はキログラムを単位とし、坪量(g/m2)×1枚の用紙面積(横寸法m×縦寸法m)×1,000(枚)で計算する。板紙の場合は上記式を100(枚)に変えて計算すればよい。
紙の厚さは、印刷物の仕上がり品質や束の厚みに大きな影響を与え、印刷・加工適性にも大きく関わる。薄すぎる紙は印刷機のブランケットに絡むトラブル、厚すぎる紙は折り加工の不良や背割れになるトラブルの原因となるので注意が必要だ。なお、コート紙は塗工の度合いによって、巻取紙でしか市販されないもの(輪転印刷機でないと刷りにくい薄いもの)などがある。

同じ重さで、より厚みの出やすい嵩高(かさだか)の銘柄も、各メーカーから多くのラインナップが製造されている。基本的には「重い紙=厚い紙」なので、坪量や連量も厚みを把握する参考になる。ただし例外はあり、最終的な確認は紙見本の表記確認や、束見本の作成を経て行うことが大切である

● 原紙寸法と枚葉印刷機の対応関係

● 代表的な紙の坪量と連量

連量の端数整理は、板紙、薄葉紙、B4仕立てなどによって異なる。
上質紙などの場合は、小数点1位を二捨三入、七捨八入して0.5kg単位となる


INFORMATION
しくみ事典アーカイブは、書籍『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』から一部の記事を転載して掲載しています。

『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』
定価 4,104円(税込)
ISBN 978-4-86246-366-1
発行・発売 ボーンデジタル
DTP&印刷スーパーしくみ事典は、DTPや印刷業務に携わるすべての人に役立つ図解事典です。 巻頭特集では「最新トピック100」と題して、「付加価値を創出する最新事例」、「Adobe CC最新動向」、「デジタル印刷最新動向」といった幅広い分野を網羅する業界最新トレンドを多数ご紹介します。