特別公開版 クリエイターのための権利の本連載

第2回:今、権利について知っておくべき理由(その2)

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こんにちは。9月に刊行された「著作権トラブル解決のバイブル! クリエイターのための権利の本」という書籍の編集を担当した岡本です。

この連載は、おかげさまで発売後2週間で増刷が決定するなど、ご好評をいただいております「クリエイターのための権利の本」の一部を紹介するものです。第1章「クリエイターが権利について知っておくべき理由」をノーカットでお届けします。どのような書籍かは、このページの下の方に載せておりますので、ぜひご参照ください。

それでは、さっそく本題へと参りましょう。

●第1章「クリエイターが権利について知っておくべき理由」の概要

近年、著作権に対する意識が急速に高まってきています。この章では、現代のクリエイターが著作権の知識を身につける理由について、実際に起こったトラブルを例に解説をしていきます。

クリエイターは権利のことについて無頓着な人が多いようです。しかしクリエイターは、他人の権利を侵害する可能性も、逆に他人から権利を侵害される可能性も、非常に高い職種です。これからのクリエイターは、自分の身を守るためにも権利について知っておくべきです。

●簡単に素材を流用できてしまうからこそ注意が必要

フリー素材サイトだから使ってもよいだろうと考えて利用条件をよく読まずに使用してしまう。画像検索で自分のイメージにあった写真が見つかったのでそのままイラストにしてしまう。そんなことが簡単にできる環境にあります。2018年には芸人の「ひょっこりはん」によって自分の楽曲「sonorously box」が利用条件に違反して使用されたとして「音楽素材MusMus」の管理人が著作権侵害を指摘しました。具体的には、「著作権表記がされていない」、「著作権表記をしない場合の利用料を支払っていない」、「他の企業などにフリー音源として二次配布を行った」ことが利用条件違反だという指摘です。この件については後日「音楽素材MusMus」の管理人が吉本興業との話し合いで解決したと報告しています。

2016年に株式会社ディー・エヌ・エーが運営していたMERYやWELQなどに端を発したキュレーションサイト問題では、運営していた10サイトで著作権侵害の可能性のある記事が最大で約2万件、画像は最大で75万個あったと第三者委員会が報告しています。結果的には問題のあったキュレーションサイト10サイトが休止となりました。これほど大規模でないとしても、会社形態などで複数のクリエイターが関与して制作する場合、皆が最低限の知識を持ち合わせているケースは少ないでしょう。万が一会社の従業員がインターネット上の素材を無断転用してそれを会社名義で納品していたことが判明すれば、クライアントに対して責任を負うのは会社です。

同じクリエイターとして、他者が創作した作品に対しては、敬意を払いたいものです。権利についてよく知らずに使ってしまったことで、結果取り返しのつかないことになるかもしれません。

インターネット上では様々な素材が公開されています。簡単に流用できてしまうからこそ、正しい知識を持って何をしてよいか、何をしてはいけないのかを自分で判断しなければなりません。

著作権の侵害は、自分だけではなく所属する会社やクライアントにも迷惑がかかります

いかがでしたでしょうか。デジタルコンテンツ時代で、オリジナルコンテンツの流用や転載が容易になったからこそ、著作権への配慮は重要ですね。業務上の要請から、こうしたキュレーションコンテンツにいつ何時自身が関わることになるのか、わからない訳ですし。正しい著作権の知識と、トラブルの実例を知っておくことは重要です。

それでは、次回の連載更新をお楽しみに。

書籍概要

プロ・アマを問わずクリエイターやコンテンツ制作に従事する方が知っておかなければならない権利や法律について、具体的に「やっていいこととやってはいけないこと」「トラブルになってしまった時の対処方法」を紹介します。これまでの著作権関連の書籍のように、法律の解釈よりも、実務ベースで、よくあるケースごとにOKなのかNGなのかを「それぞれの部門のプロフェッショナル」が答える内容です。

クリエイターのための権利の本の表紙

著作権トラブル解決のバイブル! クリエイターのための権利の本

定価:本体2,400円+税
判型:A5判/224ページ/2色
ISBN:978-4-86246-414-9
発売日:2018年9月27日
発売元:ボーンデジタル
著者:大串肇、北村崇、染谷昌利、木村剛大、古賀海人、齋木弘樹、角田綾佳

出版社サイト
https://www.borndigital.co.jp/book/6761.html

●著者プロフィール

大串肇
株式会社mgn 代表取締役

Webサイト制作ディレクション業において、一般企業や開発会社と一緒にプロジェクトを円滑に効率的に進めるのが主な仕事。IT系の勉強会で行われる5分程度のライトニングトークにおいて、毎回聴衆を盛り上げることを得意とし、界隈ではLT職人と呼ばれている。 趣味はゲームをすること(上手くない)と、愛妻&愛犬とお散歩に行くこと。 Gitの勉強会を定期的に行なっている。 2013年のWordCampTokyo 実行委員長。
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