イベント速報『祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ』2016/1/23~3/23

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奇抜なアイデアで注目を集めるブックデザイナーの祖父江慎(そぶえ しん)氏。その彼が手掛けた仕事を紹介する『祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ』が、日比谷図書文化館(千代田区)で開催されている。

会場には、形になった書籍はもちろんのこと、制作途中のアイデア、ボツ案、色校、さらには祖父江氏が開発にかかわっている新しい紙やインクなども展示。デザイン、印刷、製本を、どのように試行錯誤しているのか、現場の様子が垣間見える構成となっている。
また、漱石の『心』『吾輩ハ猫デアル』新装版(岩波書店)の制作舞台裏を大々的に紹介するブースもあり、漱石ファンとしても知られる祖父江氏が収集したコレクションの一部も展示されている。

遊び心にあふれた本企画展は、デザインや出版関係者はもとより、ZINEや夏目漱石が好きな人、単純に本を読むのが好きな人まで、幅広く楽しめる内容だ。以下にその一部を紹介するが、直接見なければ分からない仕掛けも多いので、ぜひ時間を作って足を運んでみて欲しい。
 

ここでしか見られないレアもの多し

展示スペースは『コズフィッシュの書庫』『本の実験室』『漱石室』の三部構成になっている。
『コズフィッシュの書庫』は、祖父江氏の事務所で手掛けた本が並んでいるブース(写真左)。前期は「cozf編」=20世紀の書庫、後期は「ish編」=21世紀の書庫がテーマで、途中で入れ替えられるとのこと。数が多いので単に眺めているだけでも楽しいが、文字、配色、イラストや写真の使い方など、ビジュアルデザインのアイデアとしても勉強になりそうだ。
『本の実験室』は、祖父江氏のデザインプランや、印刷・製本のさまざまな試みが展示されているブース(写真右)。著者のヒゲをUVインクに混ぜて印刷したという試作品など、とにかく他に類を見ない実験的な様子がおもしろい。各コーナーの天井から垂れ下がっているバナーには、謎かけのようなテーマも。また奥のコーナーには、祖父江氏がデザインした書体の元になった金属活字の母型も飾られている。
『漱石室』は、『心』『吾輩ハ猫デアル』新装版を展示しているブース。装丁のために漱石自身が描いた装画、漱石が手を入れたゲラなどが展示されている。後期には、現在制作中の『吾輩ハ猫デアル』の完成形がお目見えする予定だ。

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発見につながるユニークな「見る」仕掛け

写真左は、『むりやりなアミ点』『ふつうのアミ点』のアミ点の観察がテーマになっている。『むりやりなアミ点』は、なんとも贅沢な印刷で、そう簡単に試したり見たりできるものではない代物。アートのような点描が堪能できる作品だ。
写真右の『闇で見る』コーナーには、暗いところで見る仕掛けが詰まっている。机上に懐中電灯が用意されているので、装丁や壁の印刷にライトを当てて見て欲しい。筆者は書籍編集者であるが、こんなインクがあったのかと正直驚いた。と同時に、一般的な書籍の予算ではムリそう……という印象も。
こういった特殊印刷を目にする機会はなかなかないと思う。そういう意味でも必見である。

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展示用の特別な印刷物も見どころ

写真左の干された洗濯物のように展示されているのは、あいさつ文。一見紙のように見えるが、実は布に印刷されたもので、濡らして干し、あえてくしゃくしゃにしているという。本文用紙のように布を使う発想がユニーク。
写真右は、拡大印刷された『心』の一部。この巨大な本文ページは『漱石室』に展示されている。大きな本を目の前にして、自分が小さくなった気分を味わってみるのも一興だ。

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また、入場口横の白壁には、今春出版予定である祖父江氏の作品集の刷り出しが展示されている。出版・デザイン関係者でも、関わっている本以外の刷り出しを見る機会はめったにないと思うので、忘れずにチェックしたい。

ちなみに、つい手に取ってみたくなる作品ばかりだが、残念ながら会場内は、撮影したり触れたりすることは禁止だ。ただ、同館の上階にて、祖父江氏が手掛けた装丁の一部が展示されており、こちらはじっくり触って読むこともできる。観覧後に足を運んでみてはいかがだろうか。


■イベント概要
期間:2016年1月23日(土)~3月23日(水) ※前後期にて展示替えあり
前期「cozf編」:1月23日(土)〜2月14日(日)
後期「ish編」:2月16日(火)〜3月23日(水)
休館日:2月15日(月)、3月21日(月・祝)

会場:千代田区立日比谷図書文化館
観覧料:一般300円/大学・高校生200円/千代田区民・中学生以下、障害者手帳をお持ちの方および付き添いの方1名は無料
主催:千代田区立日比谷図書文化館
共催:公益財団法人DNP文化振興財団