第1回 フィル・ヘイル 〜幼少期からフラゼッタとの出会い〜

面白いインタビューを見つけましたので、数回に分けて翻訳版でご紹介いたします!

リアルとアンリアルが共存する、独特の世界観の絵を描くアーティストとして知られる、アメリカ生まれ、ロンドン在住のアーティスト、フィル・ヘイル(Phil Hale)

◎フィル・ヘイルへのインタビュー:2012年 5月
◎インタビュアー:アマンダ・アーランソン(Amanda Erlanson)

▼第1回 幼少期からフラゼッタとの出会い
第2回 リック・ベリー、マーベル、スティーヴン・キング
第3回 フォトコラージュ、ブレアの肖像画、サージェントの影響
第4回 肖像画家からの脱却、抽象化、繰り返される題材(最終回)


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アマンダ: 1963年、ボストン生まれ。ご両親は幼いあなたを連れて突然ケニヤに引っ越し、7歳までそこで育ったそうですね。当時のことを教えてください。

フィル: 家族でナイロビに引っ越したのは、4歳ごろ。父がナイロビの教育システムの改革にかかわることになったんだ。一番大きかったのは、アフリカで僕は「よそ者」だったこと。当たり前だけどね。人格形成期に、社会的影響を受けることなく、一人でいたんだ。当然、アメリカに戻った時にも「よそ者」になった。アメリカではマサチューセッツに住むことになったんだけれど、町も学校も、ありえないほど「均質」な地域で、ほんの少しの違いが目立ってしまう。

アフリカで経験したことは素晴らしかったけど、それが分かる年齢じゃなかった。僕の母親は野生動物のスケッチでジャーナルを埋めていた。ゾウ、イボイノシシ、ヒヒ……。両親はアフリカで、観察場所を作っていたんだ。僕は母のスケッチを模写したり、母と競ってもいた。少なくとも、認められたいという気持ちがあった。僕の両親は変わったところがあって、極端なこと、常識はずれなことを進んで選ぶタイプなんだ。それが苦境を招くこともあった。そんな行動は、一部、血筋からきているんだと思う。

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アマンダ: 子供のころは、どんな本を読んでいましたか?

フィル: 本の虫だった。ありきたりだけど、アフリカにいた当時はイーニッド・ブライトンに夢中だった。イーニッドの本にはずいぶん大きく影響されたと思う。それから、母の本も何冊か読んだ。母の勧めでね。カーソン・マッカラーズの「The Ballad of the Sad Cafe」とか。この本を読んだ時にはじめて、「大人になるのはずいぶん複雑なことなんだ」と思ったよ。だから、答えは「イーニッド・ブライトン」と「カーソン・マッカラーズ」

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アマンダ: あなたの血縁には、エレン・デイ・ヘイル(Ellen Day Hale)、リリアン・ウェストコット・ヘイル(Lilian Westcott Hale)、フィリップ・レスリー・ヘイル(Philip Leslie Hale)、ロバート・ビバリー・ヘイル(Robert Beverly Hale)ら、著名な画家がいますね。家系図を遡れば、奴隷制度廃止に大きく貢献した「アンクル・トムの小屋」の著者ハリエット・ビーチャー・ストウ(Harriet Beecher Stowe)、アメリカ独立戦争の英雄ネイサン・ヘイル(Nathan Hale)(イギリス軍につかまり、絞首刑にされる前に「私が悔やむのは、この国に捧げる命が1つしかないことだけだ」という言葉を残したことで知られる)といった著名人もいますね。あなたのお祖母さまとお母さまが画家だったことを考えると、あなた自身がアーティストになったのは、自然な成り行きに思えます。それほどの名家なら、創造的で、一目置かれる大人になるだろうという、潜在的なプレッシャーはありませんでしたか?

フィル: 難しい質問だね。僕に影響しているのは主に母の方で、母はその血筋ではないんだ。でも、いつでも目的意識がはっきりした、強気な人だ。アーティストになるという選択は、僕にとっては、既知の領域にとどまることだった。目の前に道があって、切り開く苦労もなかった。美術館、図書館、音楽と同じように、日常の一部。

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アマンダ: お母さまとお祖母さまは、画家ですね。そして、お祖母さまはあなたのコミック風のモンスターよりも、お兄さまの印象派風の歴史画が好みだった。そのことについて少し教えてください。

フィル: 祖母は1歳年上の兄がお気に入りだったし、兄はいかにも長男タイプだ。早熟で、責任感があり、いっぱしの大人ぶっていた。僕はと言えば、自己中心的で、社会との関わり合いを持たず、素直さや他人に対する敬意を持ち合わせていなかった。それに、たった1歳しか違わなかったから、兄とは張り合ってばかりいたよ。兄は絵が上手で、感性あふれる絵を描いた。僕が描く絵は2種類。自分が好きな題材(どくろ、腹がでっぷりとした毛むくじゃらのモンスター、虫など)と、兄に対抗して描いた作品(花、海辺の景色、クモ)だ。画材も環境も整っていたから、自然に描くようになったんだ。祖母とも一緒に描いたけど、褒めてはもらえなかったな。

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アマンダ: あなたが最初に惹かれたアーティストは、フランク・フラゼッタだと聞いています。フラゼッタの作品は、衝撃的でしたね。私は、エドガー・ライス・バロウズの「火星の秘密兵器(A Fighting Man of Mars)」の表紙を覚えています。肉体がしっかり描かれ、ライティングによってその肉感が引き立てられている。それに、彼の描く女性は、セクシーで、品があり、ヒロインとしての風格があった。当時は、まったく新しい人物の描き方を見たような思いがしたものです。フラゼッタ作品の印象と、それがあなたのビジョンの形成にどう影響したかを教えてください。

フィル: 僕は大人の一歩手前、14歳のときにショッピングモールの書店で「The Fantastic Art of Frank Frazetta」を手に取った。信じられなかった。学ぶべきものがありすぎた。コミックの方は大幅に簡略化されていたけれど、それを胸に焼き付けようようとしたら、何時間あっても足りない。今思い出せば、僕が一番好きだったのはとんでもない(ありえない)バイタリティーと、それがフラゼッタらしさに通じているところだ。それが彼の表現なんだ。でも、14歳の僕は、そのとんでもないバイタリティーに、ただ驚嘆するばかりだった。今でもフラゼッタは素晴らしいと思っている。好き嫌いはあるだろうけど、彼の絵は真っすぐなメッセージとして、たくさんの情報を効果的に伝えている。今見てもほれぼれする。


本記事は、2012年 5月 23日に行われたインタビューであり、ブログ「Erratic Phenomena」の翻訳です。執筆者およびアーティストの許可を得て掲載しています。

◎インタビュアーについて
アマンダ・アーランソン(Amanda Erlanson)は、ライターであり、収集家であり、アートブログ「Erratic Phenomena」の執筆者です。ロサンゼルス在住。そこでは、エンターテインメント業界とアートの世界を行き来している。最近の著作には、「Heroes & Villains」(共著)「Chris Berens: Mapping Infinity」「Andrew Hem: Dreams Towards Reality」「Mark Ryden: The Gay ‘90s」などがある。