岡崎友則のデザインの仕事『北九州 空弁パッケージデザイン』

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(一社)北九州青年会議所の事業として、2015年12月11日北九州空港にて、搭乗者に「空弁」を配布する北九州食材PR事業が執り行われた。「空弁」は、同年の5月に企画が立ち上がり、さまざまな専門家が集まって、何度もメニューや食材を吟味し、どのようにすれば北九州の食の魅力、文化を発信できるかを、数か月間議論して作り上げられた弁当だ。この委員会にデザイナーとして参画したのが岡崎氏である。弁当が完成するまでの経緯や「空弁」のパッケージデザインのコンセプトについて、ご本人に話を伺った。

岡崎友則(Tomonori Okazaki)
岡崎デザイン http://o-d-o.co/
1978年生まれ。北九州市出身。芸術イベントの宣伝やブランディング、地域の情報発信を中心としたデザイン事務所「岡崎デザイン」主宰。写植会社で文字組みの基礎を学び、デザイン会社でデザイン・工程管理・ディレクションを経験。その後、Webデザイン会社にてWebデザイン業務に従事し、2007年5月独立。ロゴマーク・タイポグラフィをはじめ、名刺・ショップカード、リーフレット、フライヤー、雑誌、広告デザイン、Webデザイン、またカメラマンやライターなどとチームを組んでディレクション業務も担当。日本グラフィックデザイナー協会会員。
<受賞歴>
*K-ADCアワード2012「CI・ロゴ部門」入選
*K-ADCアワード2013「CI・ロゴ部門」「ジェネラルグラフィック部門」「ブック・エディトリアル部門」入選
*K-ADCアワード2014「CI・ロゴ部門」「ジェネラルグラフィック部門 」入選
*K-ADCアワード2015「セルフプレゼンテーション部門」植原亮輔賞 受賞(小倉グラフィック)
*K-ADCアワード2015「CI・ロゴ部門」「ジェネラルグラフィック部門」入選

一般社団法人北九州青年会議所 http://kitakyushu-jc.jp/


——プロジェクトとデザインの概要について教えてください。

このプロジェクトは、北九州空港10周年記念に合わせてスタートしたものです。弁当業者の方や、マーケティングの方、大学の栄養学科の先生など、いろいろな専門家の皆さんが10人くらい集まり、2015年12月11日11:45北九州発に搭乗する乗客のためだけの弁当を作るというものでした。
デザインのみを引き受けたというよりも、プロジェクトの一員として始めから関わっていった感じですね。僕は弁当そのものについては素人ですが、ビジネスマンが多く乗る便で配ることは決まっていたので、仕事をしている人の目線で、弁当の中身について意見を出したりもしました。

弁当の中身が少し決まってきたところで、デザインに入っていきました。商品として完成するまでには3〜4ヶ月くらい時間があったのですが、途中の会議で二転三転することが多く、その都度デザインを変えていくのは結構リスクがあるなと思いつつも、すでに飛行機の便は決まっていたので、デザインは弁当の中身と平行して考えていき、最終的に弁当箱とフィックスさせるかたちで進めました。結局、中身については最後の最後まで変更があったうえ、弁当箱も当初は一段だったのが、二段に変更されています。

始めは、メニューがウリなのか素材が有名なのか、どちらの方向をアピールするのかですごく悩んでいましたね。最初のたたき台の中身は、精進料理のような質素なものでした。それで、インパクトに欠けるねという話になったのですが、素材は確かなものだったので、パッケージを派手にして、ある程度ガワでどんなものかを見てもらおうかという話になりました。ただ、あまり珍しくないというか、他の地域にもあるような、ありきたりな食材が多かったということもあり、北九州の名所をパッケージの表面で見てもらって、北九州のココで採れたコレみたいな説明書きを裏面に書こうという話になったのです。
そのアイデアをベースに、こういう感じはどうでしょうかと提案したときのたたき台が、名所のグラフィックが下に並んでいて飛行機が飛んでいるデザイン案でした。

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建物のモチーフには、北九州の観光スポットや象徴するものを採用。これらは岡崎氏が選別している。
スペースワールド、若戸大橋、小倉城、旧門司税関、門司港駅、八幡製鐵所

——デザインはどのように変わっていったのでしょうか?

たたき台のデザイン案を出したときは、特に何も変更点はなく、じゃぁこれで行きましょうか、という話になったのです。しかし、いろいろな方に弁当のメニューを見てもらうと、パンチがない、質素な感じがする、新し感がないという意見が多く、もう一回中身を考え直すことになりました。実際、この時は栄養のことを考え過ぎてしまって、あまり魅力的な弁当ではなかったと思います。
中身を再考することになり、マーケティング担当の方が、北九州市の野菜の生産量や魚の水揚げ量などの情報を持ってきてくれました。それを見ると、独自にブランド化している牛肉など、自分たちが知らなかったものがたくさん出てきたのです。そこで、とにかく食材を豪華なものにしようという話になりました。
そのときに、旅館などで地場の良いものを出す「もてなし」をテーマにしたらどうか、おせちを感じさせるような高級感のあるデザインがいいのではないか、といったアイデアが出されました。それに合わせてデザインも白を基調としたものに変更し、高級路線にシフトしていったのです。

シンプルなデザインになったことで、弁当会社の方からインパクトは必要かもというような意見も出ました。しかし、普通の量産する弁当のデザインならば派手な方がいいのかもしれないけれど、この弁当は11:45便だけのものだから普通との違いを出さないといけないという話になり、最終的に弁当箱を綴じるゴム紐の色をゴールドにして補うということで決着しています。

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最終的には、かなり豪華な弁当の中身となった。
ビジネスマンが昼食として食べることを踏まえてボリュームもアップされている。

——パッケージデザインの書体と紙について教えてください。

最初は既存のフォントの明朝体を置いてみたのですが、普通の感じがして、引っかかりがなかったので、自分で作ることにしました。
明朝にしたのは、和の雰囲気とか、高級感とかを考えたというのもありますが、ゴシックを使うと強いというか、重たい感じになる印象があり、今回は繊細なイメージを持たせたいというのもあって選んでいます。ただ、力強さも欲しかったので、ちょっと太めで強調しています。「ごちそう」のひらがなだけを太く目立つようにし、漢字は、墨が溜まるハネやトメの部分を膨らませてアナログっぽさを出し、あまり見かけたことがない書体を目指して作りました。
商品名の下には欧文でクレジット情報が入っています。クライアントの希望でこのサイズになったのですが、ここまで文字が小さいと明朝ではつぶれてしまうので、ゴシック寄りのフォントを使うことに。ちょっとポップな感じがするGillSansのスタンダードを使っています。
また、お品書きの書体はA1明朝です。ガワのデザインに合うような書体で、かつ読みやすさを考えて選びました。A1明朝は、正しい感じというか、しっかりした印象があるので、今回のデザインコンセプトにぴったりだと思います。

それから、紙には結構こだわっています。印刷や紙を高級にして、捨てられない、取って置きたくなるパッケージを目指しましょうかという話になったので、和紙のような紙で厚みのある「鳥の子紙」を使うことにしました。弁当のガワはもちろんですが、箸袋やお品書きも同じ「鳥の子紙」を使って高級感を演出しています。

ただ、高級紙に変えたことでコストが上がり、4色印刷にすると当初の予算からだいぶ足が出るということだったので、スミと特色ゴールドの2色にしてコストを下げています。特色ゴールドは、この紙に合う発色の良い金色を選びました。おせちのようなイメージで、めでたい感じにしましょうという話で、デザインをシンプルな方向に進めていたので、色数を減らすことは特に問題にならなかったですね。

ちなみに、割り箸もしっかりしたものを選び、さらに箸袋の後ろをゴールド1色で印刷して、高級感をアップしています。

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最終的なパッケージデザインは文字が主役のシンプルなものに。
特色ゴールドが良いアクセントになっている。
お品書きのイラストは岡崎氏によるもの。ギリギリまで中身の変更があったため、最後に描き上げたという。

——他に岡崎さんが作られたものはありますか?

認定マークと機内で流すCMのイメージ画像も担当しています。
認定マークというのは、パッケージデザインの一部になっている円形マークの部分です。実は、弁当のガワよりも認定マークを先に欲しいということになりまして、最初にこのデザインに取りかかりました。
もともと空弁を作ることありきのプロジェクトでしたが、これ1回きりで終わらせるのか、継続させるのかという話になったときに、認定マークを作っておいて、全国各地の空港が、その土地の名産品を使った弁当を作って、何かイベントを行うような展開ができるといいのではないかという話になりました。そこで、協議会認定マークを作ろうということになったのです。というわけで、弁当のガワをデザインするときには、認定マークを入れることは決まっていました。

認定マークのデザインについては、スタンプに使えるようなものにしたいというオーダーがありました。スタンプ内の文字は、商品名の文字と同じ考え方で作ったものです。また、スタンプはいろいろな色を使えないので、シルエットで抜いたときに綺麗に見えて、かつ“空の弁当ですよ”ということが分かる要素で構成し、ひと目でそれと分かるインパクトを感じるデザインを目指しました。

それと、機内のテレビモニターで空弁のCMを10数秒流してもらうことになったので、白黒の2パターンの画像も作成しました。白い方は空弁の宣伝用、黒い方はクレジット情報をしっかり出すという意味合いで作ったものです。スターフライヤー社のコーポレートカラーが黒なので、それを使って黒白の広告を作ったという感じですね。
ちなみに、弁当箱も黒いものを使用していますが、これもスターフライヤー社の黒に合わせて選んでいます。

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認定マークは、飛行機が太陽に向かっていくイメージになっている。
最初は白いビジュアルのみだったが、1枚では退屈な感じがするのでもう1枚スライドを用意しようという話になり、オフィシャルなイメージを定義づけする黒のビジュアルが作られた。

——振り返ってみて、今回のプロジェクトはどうでしたか?

会議が多くてとにかく大変でした。これは今回に限った話ではないのですが、たくさんの人達が集まっている中で、商品のコンセプト聞いて、デザインして、プレゼンするときは、いろいろな切り返しをあらかじめ考えていくようにしています。ここを突っ込まれた場合は、こう切り返すというような感じで、プレゼンQ&Aを想定して臨んでいました。ただ、根拠ばかり詰めていくと、誰にも感動されないものというか、説得するために作ったデザインみたいになるのもイヤだったので、ある程度はそれは分かりません、と言うようにも気をつけていました。
また、今回は搭乗する便が決まっており、必ず納期に収めなければいけないという緊張感があったので、どうしましょうか、こうしましょうか、と相手に曖昧な意見を求めるようなことはできるだけ言わないようなスタンスで、毎回プレゼンに臨むようにしました。正確には、途中で話が二転三転していったので、そうするように変更したということですね。会議では、もたつかないように、あらかじめ要所だけを書いた企画書の資料を配って口頭で説明するかたちを取り、さらにデザインのプレゼンは会議の最初の方でやらさせてもらうようにして、手早く片付けるようにしました。
デザインに関しては、わりと一任してもらってたところもあったので、今回は比較的スムーズに行った方かなと思いますが、大人数で一つの方向にまとめていくようなプロジェクトでは、意見が分かれたり、ひっくり返ったりすることがよくあるので、事前の段取りも大事だなと思っています。