図書印刷の出版営業41名がDTP検定合格!知識を体系化し、顧客の相談役を目指す

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図書印刷株式会社の創業は明治44年(1911年)。以来、日本を代表する印刷・出版会社として、書籍、雑誌、カタログ、カレンダー、ポスター、POP広告など、多彩な紙媒体の印刷を手がけてきました。時代の変遷と歩調を合わせ、最近は電子書籍を始めとするデジタルメディアの制作にも力を入れているそうです。そんな図書印刷が、2015年9月、DTP検定II種(ディレクションDTP)の団体受験を実施。印刷・出版に精通したプリプレス本部が主催する社内勉強会などの取り組みが功を奏し、受験者の9割以上にあたる出版営業41名が見事合格しました。今後も団体受験を続けていくと語る事業戦略本部の西山竜司氏、延谷 篤氏から伺った、DTP検定受験を決めた理由、受験のメリットなどをご紹介します。

ある程度の知識がなければ、お客様の信頼は得られません

西山氏は事業戦略本部 事業戦略部 企画グループの課長として、図書印刷の経営計画を策定しています。「計画を立てたら、その実現に向けた具体的な施策を考え、各部が実行し、結果を確認し、施策を修正していきます。計画実現に向けたPDCAサイクルを円滑にまわすため、様々な働きかけをすることが我々の役割です」と西山氏は語ります。そんななか、ここ2年にわたり特に力を入れてきた施策が“組版プロジェクト”だといいます。組版(くみはん)とは、企画のコンセプトや紙面の条件に配慮しつつ、文字や画像を見やすく、美しく配置する技術です。

事業戦略本部 西山竜司氏
事業戦略本部 西山竜司氏

「当社には写真植字の時代から連綿と受け継がれてきた“組版の技”があるのですが、DTPに移行して以来、徐々に完成データを支給いただく案件が増え、組版の仕事が減ってきました。とくに出版社からの依頼は、納品いただいたデータを印刷するケースが主流になっており、組版の仕事を経験したことのない出版営業も増えてきたのです」と西山氏の補佐を務める延谷氏は続けます。しかし“印刷するだけ”では、同業他社との差別化を図ることが難しく、価格競争に陥りがちだといいます。「安さだけで勝負していると、会社の体力はどんどん削られていきます。価格以外の部分で、プラスアルファの価値をお客様に提供し、当社を選んでいただきたい。そのために、社内の“組版の技”をもっと活用しようというのが、このプロジェクトの趣旨です」(西山氏)。

組版を始め、印刷用データの制作業務はプリプレス本部が担っています。ここに所属する職員のなかには、写真植字時代から務めるベテランもおり、複雑な数式や、厳密さを要求される図版の制作にも対応できます。「辞書、事典、教科書、参考書など、正確性を要求される書籍の組版であっても、安心して任せていただける。それが我々の強みです」(延谷氏)。そして、この強みを活かすために西山氏たちが掲げた施策が、出版営業全員の組版についての理解促進でした。「当社には数百名の出版営業がおり、数多くの出版社を顧客としています。お客様の抱える課題や要望を伺い、ときには相談にのり、サービスをご提案し、プリプレス本部の職員との間を仲介することが営業の役割です。プリプレス本部に匹敵するほどの専門知識は必要ないものの、ある程度の理解がなければ、お客様の信頼は得られません」(西山氏)。

以上の経緯から、プリプレス本部のベテラン職員が講師役を務める“組版勉強会”が実施されるようになりました。「勉強会を実施する傍ら、プリプレス本部が自作した“組版試験”も実施してみました。その結果、様々な知識の偏りが明らかになったのです。例えば、“この知識は、中堅以上なら知っていて当然なのに、若手社員は知らない” “得意顧客がちがうと、もっている知識もちがう”といったことがわかってきました」(西山氏)。こういった“知識のデコボコ”を底上げ・整理し、出版営業全員に体系的なDTPの知識を根付かせることで、サービスの質が向上し、顧客との信頼関係がさらに確かなものになる。やがては、組版案件の提案・受注の活発化にもつながると西山氏たちは考えました。そんな折り、勉強の手段としてのDTP検定が、図書印刷の社内で注目されたのです。

取得自体が目的化しがちな検定を、事業のPDCAサイクルにしっかり組み込む

当時、図書印刷の出版営業にはDTP検定II種の資格取得者が1名いただけで、多くの職員はその内容を理解していなかったといいます。「自作の教材や試験だけで、知識のデコボコをならすのには限界がある。何か良い方法はないかと探していくなかで、思いついたのが検定試験という手段でした。公式認定教材の『印刷メディアディレクション』(2014/ワークスコーポレーション)を取り寄せ、プリプレス本部に確認してもらったところ、“出版営業の教材として妥当な内容だろう”という意見が返ってきました」(延谷氏)。こうして、若手を中心とする選抜メンバー約40名の受験が決まったのです。

印刷メディアディレクション

製版・印刷・製本のワークフロー

受験前の勉強期間は4ヶ月弱、月1回ペースでプリプレス本部の講師による勉強会が開催され、理解の促進とモチベーションアップが図られました。「日常的に仕事で使っている知識、今後の仕事に役立ちそうな知識が数多くあったので、学習はスムーズに進んだようです。仕事に必要、仕事で使えるとわかれば、必死に勉強するものです。断片的だった個々の知識がつながり、体系化されていくにつれ、“これまで以上に、自信をもってお客様に提案できそうだ”と語る営業が増えていきました」(西山氏)。

事業戦略本部 延谷 篤氏
事業戦略本部 延谷 篤氏

DTP検定II種は、印刷物の企画から、デザイン、データ制作、印刷までの一連の工程を、そのディレクション業務に特化して問う試験です。さらに、Webサイトや電子出版など、他メディアへの印刷物の展開についても触れています。そのため、これらの知識を修得した営業は、顧客の立場や仕事の内容、扱うデータを、俯瞰的な視点から見渡せるようになります。「お客様の仕事の前後の工程や、言外の背景まで想像できるようになれば、自ずとコミュニケーションが円滑になり、誤解や認識のズレはなくなります。事前の注意喚起、トラブルの早期解決も可能になり、高いクオリティの組版データ提供が実現できるのです」。そういう成功体験を重ねて自信をつけ、顧客に対する積極的な提案、親身な説明ができる営業になってほしいと、西山氏は語ります。

「2015年の受験では41名の合格者を出すことができました。来年度も勉強会を開催し、団体受験を続けていきます。DTP検定の知識は、若手・中堅・管理職を問わず仕事の質を高めてくれるので、今後は若手以外の受験も積極的に奨励したいです」(西山氏)。顧客のよき“相談役”を目指し、会社ぐるみで出版営業の成長を支援する図書印刷。取得自体が目的化しがちな検定を、事業のPDCAサイクルにしっかりと組み込んだ、たいへん参考になる活用事例といえます。

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TEXT_ 尾形美幸(ボーンデジタル)
PHOTO_ 弘田 充