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ようこそ、メタリックカラーの世界へ!〜Iridesse Production Pressで体感するデザインのワクワク~

さまざまな色や個性豊かな紙と組み合わせた印刷手法など、常に新しい表現を探しているクリエイターにとって、興味を持った印刷手法を試してみたいと思っても、実際の仕事に取り入れることはなかなか容易ではない。だが、オンデマンド印刷なら、仕上がりを確認したうえで提案に臨むことができ、そのハードルはぐっと下がる。今回、グラフィックデザインを多く手がけるSLOW inc.が、自身のデータを使ってIridesse Production Pressを初体験。初めてのメタリックカラーの仕上がりに、どんな感想を持つのだろうか。

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※この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2020』からの転載です。

まずはIridesse Production Pressがどんなプリンタなのかを知る

Iridesse Production Pressを目にして驚きの声を上げたのはSLOW inc.のアートディレクター/デザイナーの桜沢敬樹氏。Iridesse Production Pressは、CMYKトナーに加えて2つの特殊トナーを搭載して、薄紙(52g/㎡)から厚紙(400g/㎡)まで幅広く対応するデジタル印刷機だ。印刷サンプルを手に取った桜沢氏は、「今のオンデマンド印刷機ってこんなにいろいろな用紙に印刷できるんですね」と第一印象を語ってくれた。とくに、名刺やはがき、パッケージにも使える厚紙や、手帳にも使われるような薄紙(トモエリバー)のサンプルに注目した桜沢氏。「私は出版物のデザインが多いので、オンデマンド印刷機でこんなに薄い紙にも印刷できることは知らなかった」と話す。

実は今回、桜沢氏には「メタリックカラーが出せるオンデマンド印刷機を体験してみませんか?」とだけ連絡し、メタリックカラーで印刷してみたい、というデータを持参してもらった。もちろん事前にデータの作り方などのレクチャー動画も確認し、準備をしてきた。しかし実際に目の当たりにすると、その存在感と汎用性に驚いた様子だ。

今回の印刷のために、CMYKのトナーに加えてシルバーとゴールドの特殊トナーが搭載された。この状態で、メタリックカラー体験のスタートだ
ゴールドとシルバーのトナーにCMYKを掛け合わせたメタリックカラーのチャート
夜景の輝きをメタリックカラーで表現した印刷サンプル。強い印象を与える印刷もメタリックカラーならではの強み
キーカラーとなるオレンジ色をすべてメタリックカラーで印刷。上に載せるカラーデータの色合いや[乗算]のかけ方でメタル感が変わるのが面白い
印刷が完了したらさっそく確認。はじめてのメタリックカラー体験だが、何度か繰り返すうちに「メタリックカラーの活かし方も見えてきたかも?」と桜沢氏

●Iridesse Production Pressのレクチャー動画

【Part1】<機種紹介編>特殊色×オンデマンドで広がる世界

【Part2】<制作基礎編>特殊色の基本的な使い方(ゴールド・シルバー・メタリック)

【Part3】<制作応用編>特殊色の効果的な利用方法(ゴールド・シルバー・メタリック・ホワイト・クリア)

単色使いだけではない。色のバリエーションが面白い!

まず最初のデータ(サンプル①)は、書籍の表紙デザイン。この背景にはシルバー100%、さらに上位レイヤーでテキストやオブジェクトを薄い濃度のシルバーで配置。その上にCMYKを重ねることで、メタリックカラーを表現するというアイデアだ。シルバーの濃度を変えることでメタリックカラーの見え方が変わるので、イメージ通りの色を出力するには、最初は試行錯誤も必要となる。

桜沢氏は、「この作り上げていく感じがすごく楽しいですね」と積極的にデータを変えていく。もっとメタル感の揺らぎのようなものを表現してみたい、という要望に対し、富士ゼロックスで販促物のデザインを担当している小林万紀氏は、「オブジェクトや背景に使うシルバーをグラデーションやグラデーションメッシュにして濃淡を強調すると、水の揺らぎのような仕上がりになります」とアドバイス。 

桜沢氏は、「いわゆる『特色』的な扱いじゃないんですね」とメタリックカラーの使い方を徐々に掴んできた様子だ。つまり、オフセット印刷の場合は特色を使ったとしても単色使いがメインで、プロセスカラーと混ぜて使うことはまずない。「『特色』は“その色が使いたい”と特定の色を選ぶもの。しかしIridesse Production Pressの『特殊色』の場合、シルバーやゴールドを主役にも脇役にもできる。使える色のバリエーションが一気に拡がるイメージ」(桜沢氏)だという。

Adobe Illustrator CCでのレイヤー構造。背景になるシルバーの上にプロセスカラーを乗せ、[オーバープリント]を適用することでメタリックカラーを作ることができる
シルバーとプロセスカラーを掛け合わせて、深みのあるゴールドを表現。よりメタル感を出すなら濃度の強弱をつける方法もある、とのこと。「モニタだけでは分からない仕上がりが新鮮でワクワクする」と桜沢氏

メタル感をより出すためのアプローチは?

ふたつめのデータ(サンプル②)は、黒色の背景にゴールドのロゴや文字が並ぶムックの表紙。良く見ると、背景の写真には皮革のシボ加工(シワ模様)に似た模様も含まれている。シルバートナーとCMYKトナーを使って、文字やロゴの部分に金属の質感を持たせることが目標だ。

シルバーのトナーでゴールドらしい色を表現する、と聞くと不思議な感じがするかもしれないが、それができることもIridesse Production Pressの強み。桜沢氏は事前にメタリックカラーのカラーチャートや富士ゼロックスが提供しているAdobe Illustrator用のスウォッチなどを確認し、シルバーの上にオレンジ系のカラーを重ねることでイメージしているゴールドを出せると考えた。

表紙データは1枚の画像データだ。そこでゴールドに見せたい部分だけを抜き出し、グレースケールに変換した後、ダブルトーンに変換して[インキ1:Silver]とする。出来上がったダブルトーン画像を、Adobe Illustrator上でもともとあった表紙画像の後ろに新規レイヤーとして配置し、表紙画像には透明パネルで[乗算]とすれば、シルバートナーにCMYトナーによるオレンジ色が掛け合わせられて深みのあるゴールドを表現できる。

写真に特殊色を使う場合は、ダブルトーンにしてインキにシルバーやゴールドを指定する
同じ手法でも、シルバーの上に乗せるプロセスカラーの濃度や重ね方を変えることで色合いが変わってくる。この違いをどう活かすかもデザインのひとつだ

メタリックカラーがデザインのワクワクを生み出してくれる

そしてデザインデータが出来上がったらPDF/X-4を指定して書き出し、Adobe Acrobatで確認。このとき、印刷工程の[出力プレビュー]機能を使えば、きちんと特殊トナーが指定されているかが分かる。

ダブルトーンを使うことで、写真データに特殊トナーが使えることにも驚きだが、「ゴールド、シルバーは濃い色より、薄い色との掛け合わせの方が強く輝きますし、用紙によっても色の質感が変わります。メタル感を出す方法にはいろいろなアプローチがあります」と小林氏は教えてくれた。桜沢氏が最初にイメージしていた以上に、特殊トナーの世界は広く深いようだ。

「普段、金や銀などの特殊印刷や加工を使う場合は常に予算や納期と背中合わせ。データを作り直したり、校正出力を繰り返したりすることは簡単なことではありません。デジタル印刷機なら、何度でもすぐに直した結果を見ることができるので、どんどん新しい表現にチャレンジしたくなって、すごくワクワクしています。それに最初は複雑なデータが必要だと思ってましたが、コツさえつかめば難しくないですね。オフセット印刷とは違う特殊トナーの世界、もう少し深く知りたいです」

すっかりIridesse Production Pressの面白さに目覚めた様子の桜沢氏。新しい印刷の手法はクリエイティビティにも影響を与える。特殊トナーならではの表現と驚きが、SLOW inc.のクリエイティブワークに刺激を与えたに違いない。

Information

●デザイナー向け 特殊色プリント体験DAY

富士ゼロックスでは、Iridesse Production Pressを使った特殊色プリント体験DAYを開催しています。ゴールド、シルバー、メタリックカラーを使って作成したデータをプリントして確認するだけでなく、その場でデータを補正して再出力も可能。Iridesse Production Pressの実力を体験できるまたとないチャンスです。是非ともご参加ください(参加無料/事前登録制)

開催情報は随時お知らせします。情報をご希望の方は、以下よりご登録ください。
登録はこちら


TEXT:西村希美
PHOTO:蟹 由香

提供:富士ゼロックス株式会社 www.fujixerox.co.jp/