しくみ事典アーカイブ連載

【しくみ事典アーカイブ】代表的な4種類の印刷方法と版式

※この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』からの転載です。

OVERVIEW

印刷に使う版の種類は、その印刷方式から4種に分けられる。絵柄が凸状の凸版、絵柄が平面上にある平版、絵柄が凹んでいる凹版、そして小さな穴からインキを押し出して絵柄を印刷する孔版の4版式である。紙以外の質のものに刷りたい、インキを厚盛りにしたい、長尺物に刷りたいなど機能や目的により版式を選択でき、各印刷特徴や得意とするメディアを把握し、最適な方法の採用が重要となる。

代表的な印刷方式

凸版印刷のしくみ

15世紀末にドイツのグーテンベルクにより発明された活版印刷が凸版の原点。絵柄が凸状になっている平らな版に一度に圧力をかけて印刷する平圧式(手きん印刷機)や、版を往復運動させながら円筒シリンダーで印刷を行う円圧式などがある。印刷枚数は活字が減るので数千枚程度しか刷れないが、紙型鉛版で複製版を作ることで大量の凸版印刷ができる。また、漫画や写真などは写真製版法で樹脂凸版を作り、印刷する。樹脂凸版はシリンダーに巻きつけ、週刊コミック誌のような粗面紙の輪転印刷などに使われている。

凸版印刷の版式

紙型鉛版は、鉛合金で作成した活字に、厚紙を押しつけ雌型とし、鉛合金を流し込んで紙型鉛版とする。そして紙型を半円筒状にして鉛合金を流し込み鉛版とする。この版式は新聞輪転機に使われていた。樹脂凸版での写真製版法もあり、紫外線で硬化する樹脂板にネガを焼きつけ、同時に裏面からも焼きつけ、弱アルカリ液で現像。未硬化部分が溶解し版ができる

凹版印刷のしくみ

銅板に手描きする方式の凹版の歴史は15世紀にまでさかのぼる。現在では、19世紀に英国のタルボットらにより発明された写真製版を利用したグラビア印刷が凹版方式の主流といえる。版面全体にインキをつけ、ドクター刃により非画線部のインキをこそげ取ると、凹んだ画線部にだけインキが残って印刷が可能。インキは印刷後すぐに乾燥するので、大量部数のカラー雑誌や、菓子や食品などの軟包装カラー印刷など、グラビア方式は幅広く使われている。

加熱によりすぐ乾くインキを版面につけ、ドクター刃で非画線部のインキをこそげ落とす。巻取紙やポリエチレンなどの軟包装材に連続高速カラー印刷ができる

凹版印刷の版式

凹版の原点であるエッチングは、腐食液に耐えるグランド液を銅板に塗り、ニードル(針)で描画し、腐食液で描画部分を腐食させてグランドを除去する方法だ。インキを詰め、非画線部のインキを拭き取り、湿らせた紙に印刷する。写真製版によるグラビアは、濃淡を網点の深さとサイズで表現するので、明部は小さく浅い点、暗部は大きく深い点となる

グラビア版の表面拡大図。ダイヤモンド針により銅表面を突き刺すようにして点を彫る。原稿の明るい部分は浅く、暗い部分は深くなる

平版印刷のしくみ

18世紀末にドイツのゼネフェルダーによって発明された石版(リトグラフ)が平版の原点。油性のインキを付着させる親油性の画線部と、水を保つ親水性の非画線部が同一平面上にある。印刷の前に水で版面を湿らせ、次に油性のインキをつけると、水と油の反発作用で画線部にのみインキがついて、印刷を行うことができる。かつて、石版では版面から直接印刷したが、現在は絵柄をいったんゴムシリンダーの表面に転写してから紙に印刷するオフセット印刷が主流である。オフセット印刷では水とインキのバランスが印刷品質に影響を与える。

水が与えられた版の画線部だけに油性のインキがつく。そのインキはブランケット表面に転写され、圧胴により紙に印刷される

平版印刷の版式

画線部も非画線部も完全に平らな表面にある。画線部はインキを受理する物質で作り、非画線部はインキを反発させるため、水が保たれるように「砂目」と呼ばれる微細な凹凸をつける。なお、下図はネガフィルムから版を作るPS版である

孔版印刷のしくみ

古くは謄写版が孔版印刷の原点である。代表的なものにスクリーン印刷がある。100~300メッシュのナイロンや金属糸で編まれたスクリーンを枠に固定し、非画線部にあたるスクリーンを何らかの方法で覆う。カッティング法では、絵柄部分を切り抜いた型紙を貼り、写真製版法では感光液を塗布後、ポジを焼きつけ、水で洗い出す。型紙や感光液で覆われている部分からはインキが出ない。被印刷体を選ばず、紙、金属、フィルム、電子部品の配線など幅広い印刷ができるのが特徴である。

図は高速孔版印刷機で建材や事務印刷に使われるしくみ。円筒状に張った孔版の内側からインキを押し出す

孔版印刷の版式

枠にスクリーンを張り、紫外線で硬化する感光液を塗布。ポジの焼きつけで非画線部は光硬化し、未感光の画線部だけが水で洗い流され、スクリーンの目が開く。スキージでこすることにより、画線部のスクリーンの目からインキがにじみ出し、印刷することができる

COLUMN

オフセット(平版)印刷機の種類と原理

カラー印刷は1960年代からはオフセット印刷が主流である。巻取紙を使い連続的に両面カラー印刷ができるオフセット輪転機は、機上でインキ乾燥、用紙の折りと断裁ができるので生産性が高い。紙サイズや種類を自由に変えられないが、大量生産向きである。1枚ずつの紙に印刷する枚葉機は紙の選択で自由度が大きく、小ロットにも対応ができる小回りが利く印刷機である。
水と油の反発作用を利用したのが平版印刷で、版面を水で湿らし水が乾かないうちに油性のインキをローラーでつける。水で濡れた非画線部(親水性)は油性インキをはじき、樹脂でできている画線部(親油性)だけにインキがつく。版面の絵柄部分についたインキをゴム・ブランケット表面に転写し、それをさらに圧胴に巻きついている紙に押し付けて印刷するのがオフセット印刷である。


INFORMATION
しくみ事典アーカイブは、書籍『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』から一部の記事を転載して掲載しています。

『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』
定価 4,104円(税込)
ISBN 978-4-86246-366-1
発行・発売 ボーンデジタル
DTP&印刷スーパーしくみ事典は、DTPや印刷業務に携わるすべての人に役立つ図解事典です。 巻頭特集では「最新トピック100」と題して、「付加価値を創出する最新事例」、「Adobe CC最新動向」、「デジタル印刷最新動向」といった幅広い分野を網羅する業界最新トレンドを多数ご紹介します。