しくみ事典アーカイブ連載

【しくみ事典アーカイブ】代表的な加工技術

※この記事は『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』からの転載です。

OVERVIEW

印刷物は印刷の後に折り・断裁をはじめさまざまな加工を経て最終の目的物となる。後工程である加工技術を知ることで、彩り豊かでバラエティに富んだ印刷物を制作することができるだろう。ここでは印刷物にオリジナリティを付加することができる代表的な加工技術について解説する。

折り加工

「折り加工」は、印刷後の後加工として基本的な工程であり、何らかの折り加工を施された印刷物はじつに多い。
チラシ、DM、カードなど1枚ものの印刷物では2つ折、3つ折などがある。また、出版物では32ページ、16ページ、8ページといった単位でページを面付けして原紙に印刷し、製本のためにそれを規則に従って折ってページがつながる折丁とし、それを重ねて綴じるといった製本の前段階として折り加工が使われている。
折り方には2つ折、3つ折をはじめ、さまざまなバリエーションがあるが、折り方の名称については「通称」はあるものの一定の呼び名が定められているわけではない。折り方を伝えるだけでは間違う恐れがあるので、校正刷りや出力見本で「折見本」を作成し、折り方、折る場所、表裏などを明確にしておく必要がある。

折り加工で注意すべき点

折り加工をする印刷物での注意点としては、DMなどによく使われる巻3つ折、両観音折などでは、折り加工の工程で、内側の小口が谷折の部分に当たって折れる危険がある。それを防ぐため、内側面の短辺寸法を、外側面の短辺寸法よりも若干短くしておく必要がある。
また、折る方向、紙の厚さや硬さ、用紙の種類によっては、折山部分がガタついたり割れたりすることがある。さらに極端に薄い紙では機械で折ることが難しい場合もある。事前に加工を予定する用紙を使って折りの確認をすることが大切である。
折り加工の応用として、冊子の表紙を片観音にしたり、名刺を2つ折りや3つ折にしたりするといったものがある。他の加工などとの組み合わせで印刷物に独自の特徴を付加することができる。

折り加工

穴開け・筋入れ・ミシン入れ・角丸

ここでは比較的、簡易かつ低コストで実現可能な加工をいくつか紹介する。

穴開け

社内報や業界誌などで多用される加工で、ひもや2穴ファイルなどで綴じておけるようにするために穴をあけるもの。
この場合の穴は普通は2カ所で、綴じ側の天地中央に80mm間隔であけられることが多い。
ほかにも任意の場所に任意の大きさで開孔することはできるが、大きさやあける個数によって料金・納期は変わってくる。

筋入れ

フライヤーやPOPなどで厚めの紙などを折りやすくするために折り目を入れる加工が「筋入れ(筋押し、クリース)」である。
筋入れは筋を入れた側が凹状になり、その裏側が凸状になるため、筋を入れる場所が山折りになるのか谷折りになるのかを指定して発注する必要がある。
また、薄い紙では筋入れ部分が切れてしまう危険がある。紙の厚さの確認をしておくことが大切である。

ミシン入れ

チケットやクーポンなどで紙を切り取れるようにする加工が「ミシン入れ」(ミシン目加工)である。
一度に加工できるミシン目の線の数が限られているので、複数のミシン目を入れる場合には事前に確認する必要がある。
また、通常はミシン目は紙の辺に平行に紙の端から端までの直線となるが、紙の角部分に斜めに入れたり、途中からミシン目を入れるような場合(ジャンプミシン目)は、そうした加工が可能かどうか確認を必要とする。

角丸

フライヤー、はがき、ショップカードなどに使われる、紙の角を丸くする加工が「角丸」である。
角丸の大きさは角丸の半径で指定をする。通常は同時に4カ所の角を丸くすることができるが、1カ所でも半径の違う角丸にする場合は工程が2回以上となる。
また、紙の大きさにより使える角丸の大きさが指定されている場合もあるので注意が必要である。

なお、筋入れ、ミシン入れ、穴開け、角丸の加工を複数組み合わせて1工程で施すことが可能な場合がある。
いずれの加工も、加工機械の仕様に合わせることで費用・納期とも効率化できると言えよう。

複雑な型抜きやカッティング

前項のような既存の加工機械では施工することの難しい複雑な形状のカット加工では、オリジナルの型抜きの知識も身につけておくべきだろう。代表的なものを挙げておこう。

型抜き

型抜きしたい形に金属製の抜き型をつくり、紙の一部を打ち抜く加工方法。抜き型はベースとなるベニヤ板や樹脂板にレーザーで目的の形に溝を掘り、そこに鋼製の刃物(「トムソン刃」)を埋め込んだもの。曲線にも対応でき、型抜きと同時に筋入れも可能である。
箱などの紙器、グリーティングカード、POP、仕掛け絵本、ページものの印刷物の表紙への穴(窓)開け、雑誌の付録などに使われる。
オンデマンド印刷では、型抜きは型そのものにコストがかかり、大量加工が前提であるためあまり使われない。

プロッタカット

コンピュータのデータからカッティングシートを切り出すことのできる(カッティング)プロッタを使って型抜きの加工をするもの。広告用の看板、ステッカー、ポスターなどに広く使われている。この機械は、製図等に使われるペンプロッタのペンの代わりに刃物を取りつけたものである。
プロッタカットは前述の型抜きの前段階にテストとして使われることもある。

レーザーカット

複雑で微細な形を型抜きするために使われるのが「レーザーカット」で、レース状のカットをあしらったグリーティングカードやノベルティなどに使われている。
レーザーカットはIllustratorのデータを使って紙にレーザー照射して紙を焼き切る手法で、素材によりヤニや焦げめがつく場合がある。また、レーザーが当たる部分はレーザーの直径分(0.3mm程度)焼け落ちることになるので、それを考慮したデータ作成が必要となる。


INFORMATION
しくみ事典アーカイブは、書籍『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』から一部の記事を転載して掲載しています。

『カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典 2017』
定価 4,104円(税込)
ISBN 978-4-86246-366-1
発行・発売 ボーンデジタル
DTP&印刷スーパーしくみ事典は、DTPや印刷業務に携わるすべての人に役立つ図解事典です。 巻頭特集では「最新トピック100」と題して、「付加価値を創出する最新事例」、「Adobe CC最新動向」、「デジタル印刷最新動向」といった幅広い分野を網羅する業界最新トレンドを多数ご紹介します。